管楽器の中でもサックスは、ほとんどのモデルが製品出荷の段階で既にベルに彫刻が入っている。だから後から何か彫刻を加える場合、元々の彫刻とのコラボレーションというスタンスになる。

今回のモデルはYAMAHAのアルトサックスYAS-62だ。予め入っている彫刻をそのまま活かしながら、どこにご希望の絵柄を入れられるかという検討から始まった。すでにベル横には彫刻が入っていて、ここには加えることはできない。たとえ空白があったとしても、それは全体で見ると計算されているものなので。

オーナーさんと相談をした結果、ネック・ベル先端・U字管・2番管(キーがいっぱいついているテーパー管)、そして3つのキーカップに入れようということになった。ただし、キーカップに彫刻を入れるためには、キーを外す必要があり、ついでに全体調整もしようという流れになった。この全体調整の部分だけは、凄腕リペアマンの石井さんに依頼する事にした。

絵柄は「桜」。僕の一番好きなテーマでもあり、レイアウトはお任せいただく事になった。ゴテゴテ感が出ないように品良くという方向で。

まずネックに関しては、今回新たなイメージで絵柄を描いてみた。今まで、左面と右面でわかれた絵柄にしてたけど、今回は一体というか、右面から左面に流れるような繋がったイメージだ。(なぜか右面の記録写真が無かった。)

2番管はキーや台座がたくさんついていて彫れる場所は限られる。ここも空間を埋めるようにいっぱい彫ってしまうと、ゲップが出るようなやりすぎ感が出てくるので、気をつけないといけない。

次にU字管は、ベル本体に接しているが故に、ベル本体の彫刻のイメージの余韻を感じる部位だ。従って、その余韻を活かしながらも、2番管からの桜のイメージを繋げていくようなレイアウトになった。

ベル先端は、グルッと一周彫ってしまうと趣がなくなってしまうので、部分的にレイアウトして空白の部分の余韻を感じられるようにしている。

最後に、3つのキーのキーカップだ。キーカップはグルッと一周彫るとどうも違和感が出てくるし、3つに同じような絵柄を入れるのはつまらないので、3つのキー全体でストーリーがあるような考え方でレイアウトした。

全体としては、元々ベル本体に入っていた彫刻とのコラボレーションがそんなに違和感なく感じられるかなと思う。

オーナーさんからは、下記のようなお返事を頂戴した。

「サックス届きました。修行に出したセガレがほんと立派になって帰って来た‼️という感じです。派手すぎず上品に仕上がっていてとってもカッコよく大満足です。ありがとうございました。また機会あったらよろしくお願いします。」

まずは気に入っていただけて良かった〜!