私や周りの友人達を見るに、学生や独身時代に音楽に没頭していても、結婚してからは時間的にも金銭面でも家族を優先する人がほとんどだ。 そんな中でも音楽を続けられるのはありがたいと思う。 そしてほとんど皆んなだけど、カミさんや子供の笑顔が揃った時の幸せ感は何ものにも替え難くて、スマホやPCの待受画面にしたりしている。

 という中で、今回はご自分の愛器トランペットに家族の一人一人をイメージして刻んでおこうという、お父さんの本能に響く贅沢なオーダーだった。

 楽器はBachのトランペット、表面処理はシルバープレートだ。元々ロゴの周囲に★マークや唐草模様が可愛らしくレーザー加工(と思うが)で入っている。

 そして、絵柄のご希望には下記のような非常に重要な要素があった。それぞれイメージ参考となる写真をいただいたので、それに沿って考えていく事になる。

  • ロゴマークを変形菱形に囲むエリアを対象に彫刻する。
  • お名前に『莉』を持つお子様をイメージして、『ジャスミン(漢字:茉莉花)の花』をモチーフに入れる。
  • お名前に『穂』を持つお子様をイメージして、『稲穂』をモチーフに入れる。
  • 猫好きな奥様をイメージして、(ここは我が家だと最重要項目で、超カワイイ事が必須条件になるのだが)『稲穂と戯れる猫』をモチーフの一つに入れる。
  • ご自分のイニシャル「y.y.」を入れる。

 おお〜、これは要素が多くて限定エリアの中で表現するのは難しいかも・・・・。

 というのも、私の場合、デザインは引き算で考えている。ポイントとなる要素は少ない方が統一したイメージがインパクトを持って伝わるからだ。逆に要素が多いと全体として伝わるものが散漫になりがちだ。と思いながらも、ラフラフな絵を描いてみた。

 『ジャスミン』が全体イメージを作る事になる。
 そして、お父さんの『y.y.』は家族全体を支える存在として下側に位置するのは決定とする。
 『稲穂』と『猫』は、『ジャスミン』と一般的には絵柄上の関連性が薄いなあ。でもこのオーナーさん宅では重要な要素の一つだから、ワンポイント的にはなるけど、あまり小さくできない。やっぱり家族全員が入っているイメージからは遠のいてしまうから。そうかと言って、ジャスミンのボリュームが小さくなると全体イメージがぼんやりしてしまう。
 これはバランスがどこに来るか難しい。紙上で事前にはわからないので、楽器に相対して見つけていくしかない。

 まずは、保護テープで養生してから、ボチボチと下側から始める。

 次に横を廻って上側のブロックに彫り進んだ。

 ちなみに、悩みどころがあるので、ラフを描いた後にZOOM打ち合わせをさせていただいた。その際、奥様のご意見も伺う事ができて、「猫は丸まってる姿がかわいいんじゃない?」との事だったけど、最終的にはラフのような姿でGOになった経緯がある。丸まってる猫の姿はなんだか丸い超可愛らしいモフモフ物体としか見えなくて、とても猫とは認識できないだろうから、良い結論に落ち着いたと思う。

 全体として見るとこんなバランスにできあがった。

 すぐオーナーさんに宅急便で送付!後はどのようなご感想をいただけるやら?

 後日、突然お電話いただきました。凄く興奮されて、喜んでいただけて、私も非常に嬉しい。猫ちゃんも非常にかわいらしい姿ではいっていてよかったとの事でした。
 これから愛器トランペットを吹くたびに、そこに家族団欒の姿を見れるなんて、嬉しい話ですなあ。