今回のオーナーさんは女性の方。吹奏楽やサックスアンサンブルやジャズバンドに入ってサックス演奏を楽しんでいらっしゃる。相棒の楽器はセルマーのアルトサックス『シリーズⅢ』。ただし、ネックは別途入手された銀メッキ仕上げのものを使用されている。

そしてご希望は、当初装着されていたラッカー仕上げのネックに彫刻を施し、さらに金メッキ仕上げをしたいとの事だった。

ラッカー剥離から、表面のバフ研磨、メッキ加工、コルク巻きなどの工程に関しては、いつものように凄腕リペアマンの石井管楽器さんにお願いする事にした。石井さんは細かいところまで非常に注意深く仕事をされるので安心。バフ磨き後も超綺麗になってきた。

モチーフに関しては、『藤の花』をご希望だった。藤の花というと、遠景で見る藤棚的な美しさを思い出したが、一つ一つがどんな花だったかわからなくて、いろいろ画像を探してみた。

う〜ん、やっぱり遠景で見る美しさに惹かれる気がする。でも、それを彫刻で表現するには、上面寄りに細かい地模様みたいな彫り方をする必要があるけど、綺麗になるかな?また唐草模様もバランス良く組み合わせていきたいけど可能か?などと悩む。

一方、近寄って花びらを見ると、若干変わった形だ。複雑な造形なので、忠実に表現するとゴチャゴチャして美しくはならなそう。おそらく単純化デフォルメする必要がある。

という事で、悩んで決心するまでに時間がかかったけれど、中間的な一房二房が見える光景で展開する事に決めた。

さあ、これでまた石井さんに託して、再度表面を綺麗に仕上げた後に、メッキ加工だ。ちなみに、メッキの種類に関しては、オーナーさんの柔らかくて包み込むようなクラシック系の音が大好きとの事で、どちらかと言えば比較的柔らかいと感じる人が多いピンクゴールドになった。

預けて約3週間後に仕上がってきた。

綺麗に仕上がってきましたよ〜!ピンクゴールドの色も藤の花のイメージに近くていいね。

このモデルは、ネックの前面に三角のプレートがついてないバージョンで、そこにぽっかりとスペースが空いている。

顔に当たる部分なので目立つし、何かアイキャッチ的な存在が欲しい。リクエストはなかったけど、蝶を入れておいた。蝶は吉兆のお知らせという意味もあるので、オーナーさんに良い知らせが届く事を祈って。

後日、オーナーさんから到着のお知らせが来た。


昨日、ネック届きました。
もう、素晴らしいの一言です😃
華やかなのに上品で、
ピンクゴールドとぴったりで、
すごく嬉しい🎵😍🎵です。
藤の花にして良かったです。
大変難しい注文にもかかわらず、
素敵な仕上がりにしていただいて感謝です。
自分へのお祝いに最高の物になりました。
これからのサックスライフが益々楽しくなりそうです。
本当にありがとうございました!

良かった。藤の花をどう表現するか迷ったけれど、まずは喜んでいただけたので一件落着。新しいモチーフは、悩みも多いが視野が広がって成長に繋がる。一彫入魂だ!