約3年前、『SPADA BJ1(モネタイプモデル)』に桜の彫刻を彫らせていただいた。 なんと、同じオーナーさんから別のモデル『Bach SPADA』に桜の彫刻依頼のオーダーが届きましたよ!!!

オーラを放つ楽器だ

 トランペット吹きの方はご存知かもしれないが、SPADAはBach公認のチューンナップメーカーだ。
 このモデルはBachから提供される部品の中から良いものを選んで使っており、さらにこだわりの金メッキをかけている。一般的には、下地に銀メッキをかけてから金メッキをかける事が多いはずだが、このBach SPADAは、下地に18金メッキ、その上に24金メッキだそうだ。聞いた事ない。

 到着したばかりの写真をあげておく。
 前回のSPADA BJ1がゴツゴツした豪快な印象のフォルムだったが、それに比較すると今回のBach SPADAは優しめのフォルムだ。なんだかオーラのある楽器だな〜、金の色も若干濃く感じるけど気のせいかな?



今回のモチーフは

 さて今回のモチーフは、前回に引き続き『桜』。ただし、一つだけ異なる点があった。トランペットの師匠の秋山璃帆さんと同じく、『鳥居』もいれてというご希望だ。

 以前、トランペット奏者『秋山璃帆」さんからご依頼いただいて、ホルン『アレキサンダー103』に彫らせていただいた事がある。
 彼女は桜好きなので、やはりメインテーマが『桜』。そして、故郷の鎌倉にまつわる想い出として、『鶴岡八幡の鳥居』や、『花筏(水面に落ちた桜の花が連なる光景)』などを盛り込んだ記憶がある。桜も満開にしてかなりのボリュームになった。何よりこのアレキサンダー103はベルの薄さが半端なくて、凹みが出るんじゃないかと思ってヒヤヒヤした記憶がいまだ鮮明だ。

 ただし、今回のオーナーさんは鎌倉の方ではないし、同じコンセプトにはできない。師匠に連なる証として『鳥居』を入れるとしても、何か他のオリジナルを考える必要がある。などど考えながら、彫刻をいれるスペースを残して後は保護テープでぐるぐる巻きにしていった。

 楽器それぞれに彫り心地というか、削れる感覚が微妙に異なるので、本来なら慣れるまでは隅っこの方から始めるのが安全なのだけれど、なぜかいつも全体の肝になる部分から最初に始めるくせがある。

桜を右回り螺旋構造で

 今回、ロゴマークの下に最も密度の高い『桜満開』状態を持ってきた。
 さらに、3つの桜の枝の流れ(一番左側の流れは写真ではあまり見えない)が右回りの螺旋を描くように配置した。

 昔、物理で習ったが、右回りの方向に電流が流れた場合、その中に生じる磁力は右ネジの進行方向に向けて発生する。
 同様に、『桜の右回り螺旋の流れを作ると、桜の持つエネルギーがベル先端の方向に向かう力が発生するのだ。』と勝手に桜螺旋理論を作り上げた。
 すなわち、『オーナーさんが演奏を楽しむ時、その音と共に、日本人が桜に感じる『愛」や『幸せ』のエネルギーをまとって広がっていく』ようなイメージ。

 上の写真では良く見えるが、若干センターから右側に外れた位置に、桜の遠景に見えている雰囲気で、スペシャルオーダーの『鳥居』をいれた。『花筏』も近いところに流れを作る。

転調して雰囲気を変える

 さあ、次はロゴマークの上だ。
 ここから上も全体的に桜が満開状態にもできるが、一本調子になってしまうので面白くない。ここは、異なる要素を加えて雰囲気を変えてみる。音楽でいうと転調のようなものかな。
 これまた僕の好きな『蝶』がポイントになる。

 桜は咲きつつも、余白を多めにとって、そこに蝶々4頭が舞っている。これは余白がないと窮屈になるし、下の桜満開状態からの変化が大きくなる要素でもある。

 ロゴマーク下の桜満開の華やかさや繊細さから転じて、ロゴマーク上の桜の中に蝶々が舞う悠々とした柔らかさが生じたように思う。

さらなる転調・・

 はたしてその上はどうしようか? このBach SPADAは優しそうな佇まいではあるけれども、実はダイナミックな性格を秘めている気がするので、もう一つ転調してそんな雰囲気を加えてみよう!

 桜と蝶のゆったりした雰囲気から唐草模様のダイナミックな展開に繋げてみた。さらに最後に、またまた転調して桜の穏やかな華やぎに戻って収束していくという流れになった。

 どうかな?オーナーさんのご希望やお人柄、そして楽器から受ける印象を受けて、変化のあるデザインになったように思える。

 ところで、オーナーさんから見える風景は下の写真のような感じだ。側面の写真を撮り忘れたのだけれど、側面には上面と異なる表情をつけているので、角度によって眺めを楽しむ事ができる。それはオーナーさんだけのお楽しみ特典だ。


最後に、ベル先端。

 これはベル横のロゴマーク下の流れを受けて、やはり3つの桜螺旋構造にしてみた。珍しく奥行きを作ってみた。奥深くは彫刻刀の角度がとれない危険地帯に入ってくるので要注意だ。


完成!オーナーさんの反応は?

 さあ、完成して、すぐ宅急便で返送。
 オーナーさんの反応を待つ。

今、コーティング剤で楽器を磨きながら、ご連絡してます。
今回も素敵な彫刻をありがとうございました。
前に素敵な素晴らしい物を頂いてましたので、概ね、今回もこれ位素敵な物だろうなと予測はしてましが、それはすぐ覆され、圧倒的な敗北感と最高の品物に、しばし只々触れる事が出来ませんでした。本当に素晴らしい品物です。
花びらの細かさも以前より素晴らしく、向きなど表情豊かでした。何よりおまけの鳥居は最高です。( ᵘ ᵕ ᵘ ⁎)
前の楽器はベルも大きいので、あのサイズの花びらで丁度良いし、2本とも最高の我が家の宝物となりました。本当にありがとうございます。
娘が嫁ぐ時には家宝?として渡します。一本は私のですけどねw
それではこれかも頑張って下さい。

構えた時にベルの2重に右回転に舞ってる桜が最高ですね!
テンション上がります!( ᵘ ᵕ ᵘ ⁎)
ベルも正面下の桜も良いです。伝えようか迷ってましたが、ベルの花は右下か下が落ち着くなーって思ってました。もう満足です。( ᵘ ᵕ ᵘ ⁎)

 喜んでいただけたようで何よりです。
 2本のSPADAは異なるデザインの楽器で、前回のSPADA BJ1は豪快な印象、今回のBach SPADAは優しい印象なのだけれど、それに合わせて自然と豪快な桜と優しい桜が咲いてくれた。彫刻の神様に感謝するしかないね。