最近、時計のオリジナル製作をしている彫刻家の作品や、非常に美しい日本刀を手にとって拝見する機会をいただいて、凄く刺激を受けていた。恐ろしいほど高いレベルで無茶苦茶美しかった。今までに増して高みを目指していこうという意欲が沸々と湧いて来る今日この頃だ。
今回のオーナーさんは、フルート歴45年、サックス歴37年、吹奏楽指導などプロアマで音楽活動をされてるという、ベテランだ。
そして、奥方様もフルートをお持ちだそうで、ご夫婦で音楽をされるとはなんて素敵な関係だろう。その奥方様のフルートのリッププレートには既に彫刻が施されているそうで、滑り止めにも役に立っているのを見て、ご自分のフルートにも彫刻を入れたくなったという経緯だった。
さて、フルートは元々見ているだけで繊細さや優雅さを感じる美しい楽器だ。
今回お預かりしたフルートは、ミヤザワフルートのgi-buというモデルで、しかもそのファーストモデル。とても丁寧に美しく仕上がっていて、ファンも多く、希少価値が高いそうだ。メーカーの方からも、『手放さない方がいいですよ!』と言われたとか。それほど大事にされてるフルートのリッププレートに、桜の彫刻をお任せで入れたいとのご希望だった。責任重大なのだ。
桜は僕の大好きなモチーフなので、ラフを描いたりする事もせず、実際の楽器に下絵を描く事からスタートする。でも、最近は予め全体を描いてしまう事はなくて、中心の部分だけを先に進める。メインのいくつかの花を位置決めをする時点で何度か試行錯誤する事になるが、ビビッと心に来るレイアウトが決まったら、その外枠線だけを先に彫ってしまう。そして、そこからちょっとづつ広げていく。
フルートは繊細なイメージの楽器だし、リッププレートは面積が小さいので、その彫刻は自ずとサックスやトランペットの場合より超細かくなる。それに彫刻刀が滑って唄口を傷つける悪夢が頭にちらついたりするので、緊張感が半端ない。でもその分、出来上がった瞬間は一挙に緊張感から解放される。今回は時計の彫刻や日本刀に刺激を受けた後だった事もあって、最後の一彫りが完了した後は解放感がひとしおだった。
さあ、オーナーさんの反応はどうだろう?
直接お会いできる時は、初めてケースを開けた時の反応が楽しみなんだけど。
今回は宅急便で返送する事になったので、直接的にはわからないが、下記のようなご連絡をいただいた。
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受け取りました
物凄いですね。
これはもう、美術品の域ですよ。
美術館に飾りたいですね(笑)
機能性もまったく問題ありません。
ただただ、感動しました
大切に使わせて頂くと同時に、宣伝しておきます。
みんな、彫刻して欲しい限りです。
ありがとうございました
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追伸
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昨日、夜な夜な1時間ほど試奏しましたが、
ザラザラ感が良く、とても良い感触でした。
ナチュラルな感触で、まったく違和感を感じません。
長い演奏会にもナチュラルなパフォーマンスを発揮する気がします。
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嬉しい〜!
まあ、リップサービスはあるとしても、気に入っていただけて、機能的にも大丈夫で、ただただ嬉しい!
過去の作品が手を抜いているわけでは全くないけど、他の業界の刺激を受けた後だけに、今までにない作品になった気がする。
これからも満足する事なく、どんどん高みを目指していきたい。