今回は、トランペットとコルネットのロゴマーク周りに彫刻。当初、要素としてはイニシャルの「TN」を入れて、あとは唐草模様的なおまかせというご要望だった。さあ、結果はいかに?

まずはZOOM打ち合わせしてみた

まずは、初めにZOOMで顔を合わせて会話してみた。これは、オーナーさんが普段どんな活動をされてるかとか、どんな雰囲気が好きなのかとかが感じられていいし、たぶんオーナーさんにとっても安心なんじゃないかな?わからないけど。

オーナーさんは僕よりちょっと先輩だった。そして、パソコンの自作や木工をされるなど、ご自分でいろんな物を作り上げるのが好きな方だ。作られた『猫足の花台』を拝見したが、シンプルで流れるようなラインの脚が綺麗。デザインに関しては、好みの方向性が僕とも近い気がする。

レイアウトを検討

どんな風な絵柄にするかだけど、ZOOM打ち合わせの結果を踏まえて、どちらの楽器もロゴマークを囲んで変形菱形のエリアに彫る事にした。

ただし、コルネットは形状がトランペットとは若干違うし、より柔らかい雰囲気の音を持っている。だから、全体的には同じだけれど、それぞれの個性に合わせて彫刻も違いを持たせたい。どういう風に個性付けするかは、オーナーさんと相談だ。

まずは、トランペットとコルネット用にそれぞれラフラフな絵を描いてみた。トランペットはロゴマークの下側に「TN」を入れ、コルネットはロゴマークの上に「T」で下に「N」が入っている。このラフをたたき台にして、あとはオーナーさんのご意見次第。

これをお見せしたところ、オーナーさんからはほぼOKいただいたけれど、一つだけご要望が追加になった。猫を入れたいとの事だった。そう言えば、ZOOM中に部屋の中にも猫ちゃんの姿が見えていた。あくまで参考にということで、下記のような画像やイラストを送っていただいた。

この背伸びをする姿が特にお好きという事だったので、これを要素に盛り込む事にした。結果、盛り込む要素は、下記3つだ。

1.イニシャル 「T」「N」
2.猫の背伸び
3.唐草模様

楽器のお預かり

受け渡し時には、わざわざ最寄りの駅までお越しいただいて、いつもの喫茶店でお茶しながら楽器談義。もう一つは猫談義。オーナーさん宅には猫ちゃんが数匹いるそうで、我が家にもう1匹来たら楽しそうだなあとか思いつつ会話が止まらない。

猫の絵柄に関しては、今、我が家の猫の絵を描けるようにと思って練習中という事もあって、喜んで!という感じだ。オーナーさんからは、実際にどのように入れるかはおまかせすると一任いただいたので、トランペットとコルネットを並べて眺めながら大体のイメージを固め、あとは下絵を描きながら決定することにした。

彫刻の結果は

まずはレイアウトの検討だ。トランペットとコルネットの違いをどう解釈するかということと、イニシャル&猫がどこに来るのがいいだろうかという事がポイントだった。実際の楽器に下絵を何度か描いてみて、やっと『これだ!』というところに落ち着いた。

最初にトランペットを彫った。ロゴマークの下に予定通りイニシャル「T N」を入れ、ロゴマークのすぐ上に猫が左向きで背伸びしているようなレイアウトにした。あとは、変形菱形のエリアを形作るように唐草模様で展開だ。写真を撮ってみたけど、やっぱりうまくは写らない。そろそろ撮影用セットを作らないといかんかなあ。

次に、コルネットだ。こちらは、トランペットより柔らかい音の出る楽器なので、彫刻の印象もそんな雰囲気にしたい。唐草模様を大柄でゆったりと柔らかい感じにして構成してみた。それに合わせて、ロゴマークの上の猫も若干大きめにして、トランペットと逆の右向きにしておいた。

結果としては、トランペットとコルネットの性格分けは当初の予定とは若干異なるけど、腑に落ちる仕上がりとなったかな。後は最も大事な『オーナーさんに喜んでいただけるかどうか』だ。

いよいよドキドキの納品だ!

約2週間後、再び最寄駅までお越しいただいた。例の喫茶店でコーヒーを頼むのだけれど、オーナーさんはなんだかソワソワされている。大事な楽器だから心配されるのももっともな事なので、ちょっと聞いてみた。
(森脇→森、オーナーさん→オ)

森 「ドキドキされてます?」
オ 「そうなんです。」
森 「それは私もなんです。」
オ 「早速ですが、ケースを開けて見てみていいですか?」
森 「どうぞどうぞ。」

で、おもむろにダブルケースを開けると、「オオッ!」と声が出た。それから突然、ご自分のカバンの中を何やら探され、出てきたのはメガネだった。お互い、60歳を過ぎると細かいものは裸眼では難しいみたい。

再びメガネをかけて、楽器を取り出し、じっといろんな角度からご覧になっていた。しばらくして、次の言葉が出てきた。

オ 「これは〜、想像を超えてました〜!!」
オ 「凄く嬉しいです。」
オ 「いつまででも見ていられます。」
オ 「来週、節目の年の誕生日を迎えるので、とても良い記念になりました!」
森 「おお〜、良かったです!」

本当に良かった〜〜〜〜〜!!!!非常に嬉しい〜〜〜!!!

後日談

後日、メールをいただいた。

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こんばんは。

先日は素晴らしい彫刻をしていただきありがとうございました。
毎日 楽器ケースを開けるときに喜びと幸せを感じます。
ねこのしなやかな伸び姿は本当に素敵です。
猫好きの森脇様にお任せして大正解でした。

当日Twitterにupしましたが、良い写真ではありませんでした。
本日 工夫して撮影しました。
私の腕ではこれが精一杯です。
どうぞご笑納ください。
参考までに撮影風景写真も入れておきます。
木工用のウマとあて台に布を被せました。
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凄い! 僕のより断然綺麗にクリアに撮れている。

そう、トランペットは写真を撮るのが難しいという話もしていたのだ。実際、周りや自分も映り込むし、光の加減もあって、彫刻が綺麗に写るようにするには、周囲を白布か黒布で覆ったり、光源をうまい角度や距離にセットしたりする必要がある。オーナーさんは、木工や自作PCを手掛けたりする方だから、撮影のセットも工夫されたみたい。なかなか普通の人にできるレベルじゃないですけど〜。

参考までにいくつかオーナーさんの写真は下記の通り。
まずはトランペット。

tp-210720-own-1.jpg
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次はコルネット。

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いやあ、ケースを開けるたびに喜んでいただいてるそうで、しかも、こんな綺麗に写真も撮っていただいて、本当に嬉しい。

さあ、これを励みにして、まだまだ先を目指して一彫入魂だ〜!