彫刻が楽器へ影響あるのかないのか?という事について、以前の記事で書いた。https://loveandhappiness.jp/engraving-190224/
彫刻の音に対する影響は、同じ楽器で彫刻前と後を比べる必要がある。予め彫刻有りと彫刻無しの楽器では、元々の個別の楽器ごとの差異が大きいため、彫刻の影響だけを抽出して比較する事ができないからだ。
見た目には、もちろんメリットとデメリットがある。音にも影響はあるはずだ。但し、私の認識は、彫刻の影響より楽器の個体差や調整の影響の方がはるかに大きいというところだ。またリードの個体差やマウスピースの個体差、巷にあるスペシャルな付属パーツの影響の方がはるかに大きいと考える。
一本の楽器の中で、彫刻を入れる場所によって影響の大小はあるのか?という疑問に関しては、あると考える。材料力学または構造力学的な視点から考えると、力(楽器の場合は音)の発生する源流に近い場所ほど影響は大きいはずだ。サックスで言えばマウスピースやネック等の方がベルの先より大きいはず。
もう15年以上前になるが、同じ考えを持つS社の方から、アルトサックスのネックの彫刻を依頼された。あるプロのサックス奏者にプラチナメッキのネックを渡したが、どうも今ひとつ音が硬いイメージで満足がいかない。彫刻を入れると若干変わるかもしれないから、との事だった。(上の画像は記事とは無関係です)
納品後に反応を聞いたのだが、若干だが望む方向に変化して鳴りやすいように感じるとの事だった。出音でわかるかわからないか不明だけど、自分の吹奏感には変化を感じるという事らしかった。
以前サックスの開発製造に関わっていた時代に、いろいろネックや本体の試作や改造を行ってきた経験から比べると、やはり彫刻による音や吹奏感の変化はそれほど大きくないなと感じた一件だった。そして、昔はネックに彫刻は珍しかったのだが、今や当たり前に彫刻が施されている時代になった。
但し、まだマウスピースの彫刻だけはした事がない。ここは影響が最も大きいはずだ。彫刻が影響するなら、ブランド名の刻印の影響もあるだろうし、そもそも形状が音を作っている部品でもある。変化の方向性と大きさを見極めてみたいが、こればっかりはやってみないとわからない。