今回のオーナーさんは、長年寄り添った相棒というべきトランペットを携え、わざわざ私の最寄駅までお越しいただいた。いつものカフェで、普段の活動や好み、絵柄をどうするかなど、その場で方向性を考えイメージを膨らませていく。

絵柄の要素に関しては、最初は飼っていらっしゃる猫を入れようかというところからスタートして、『花』『蝶』「唐草模様』で構成する事に着地。ベル横面の先端からピストンの手前位までの間でレイアウトする事にした。

ただ、なんとなく違和感を覚えていたのだけれど、じっくり見てみると左右が逆なんじゃない(気がつくのが遅い)?
オーナーさんに尋ねたら、ストンビというスペインのメーカーの左利き用トランペットだそうだ。初めてお目にかかった!へえ〜、左利き用があるのね。

さて、モチーフの花だけれど、なんの花にしようか?といろいろと探してみた。ご本人が質実剛健的な雰囲気の方でもあるし、繊細さというよりも豪快さとかパッとわかりやすい華やかさの中に、奥深さを秘めているような感じが欲しいな。
などど考えていて、結局一つの花ではなくて、三つの花を盛り込む事にした。その一つ目で、一番目立つ花は『チューリップ』。

二つ目に『バラ』。

三つ目に『桜』だ。そして、それら三つの花を唐草模様で繋いでいく。

蝶は真ん中あたりにレイアウトしたが、一頭ではシンプル過ぎるので、二頭にしたい。でも、正面からは見えない、主管抜差管の陰に隠れそうな所に小さめにレイアウトした。あんまりわかりやすいレイアウトより、影に秘めた自分だけの持ち味みたいなものを表現してみたくなったからだ。

さあ、出来上がりはどうだ。

単に正面からの一見だけではなく、ぐるっと回してみるといろんな表情を見せる、そんな絵柄になったかな。

お戻しは宅急便になったので、ご本人からの感想はメールでいただいた。
「無事に届きました。また機会があったらよろしくおねがいします。頼んでよかったです。」

シンプルだけど、喜んでいただけたみたいでホッとする。既にオーナーさんの相棒として長年一緒に音楽を楽しんできた愛器だが、これからはさらに唯一無二の絆を深めていって、音楽や人生をより深く楽しんでいける事を願う。

いつも、過去に彫った事のないレイアウトや試みにトライするようにして、ドキドキワクワクを抱えながら進化していきたい。