今回のオーナーさんは楽団に所属してトランペットを演奏されてる方。そして、『野葡萄』の彫刻をご希望だった。

 野葡萄の花言葉はというと、「慈悲」、「慈愛」、「人間愛」。我が家の玄関にも野葡萄は植えてあるのであまり意識した事がなかったのだけれど、人気があるそうだ。

 葉の形はいろいろあるみたいで、我が家のはちょっと尖った感じだけど、オーナーさんは「丸いのが好き!」との事だった。いろんな写真を見て見たが今ひとつ実感がわかないので近所を散策がてら野葡萄の葉を研究してみた。この野葡萄の葉と丸い実と蔓の3つの要素を組み合わせでできているが、いつもの唐草模様とは違う表現が必要になりそうだ。

 ちなみに、後日オーナーさんとZOOM会議をした時に、野葡萄をとても好きな事がすぐに判明した。なんとご本人の後ろに見えるカーテンが思い切り大きな野葡萄の絵柄だったから。

 そしてもう一つオーナーさんのご希望があった。それはインコの「レモンちゃん」を小さく入れて欲しいという事だった。この子もぷっくりとして可愛らしいね。

 そして、僕の描いたラフ画は次のようなものだった。

 オーナーさんからの要望をこれに書き込んでいただいた。野葡萄の実はもうちょっと大きくとか、レモンちゃんももっと大きくとか。でもやっぱりキーワードは「丸い」だ。

 後日、届いたトランペットは猛烈にピカピカ! 
 ご本人は建築士をされてるとの事だったが、なるほど、10年愛用されてるにもかかわらずのこのピカピカ具合とか、僕のラフ画に書き込まれたポイント指示のわかりやすさなど、流石に普段からクリエイティブな仕事をされてるな〜と思わせるものだった。

 ちなみに、僕の普段の彫り方のタッチはちょっと尖った感じだ。自然と手が気持ちよく動いてできるアールなどでオリジナルのタッチができあがっている。一方、この丸〜く丸〜くというのは普段と違うのでかなり意識する必要がある。結果として、いつもより時間がかかってしまったが、なんとか新たなタッチの彫刻が彫り上がった。

 ただ、あまり整ってないのが好きなのは変わらないので、丸いながらも多少形状の異なる葉をいれてみたり、中の葉脈の表現は複数の異なる線の入れ方をしてみたりと、できるだけ均一にならないようにと思って彫ってみた。

レモンちゃんは、YAMAHAのロゴマークの右上に。ラフ画よりも大きめに、そして尻尾のあたりまで見えるように入っている。

 さあ、どうですかね。気に入っていただけたでしょうか?

 後日メールが届きました。

トランペット夕方 受け取りました(o^^o)

サイドからもたくさん見えて嬉しいです♪
予想以上に彫刻が目立って素敵ヽ(´▽`)/
吹いていても正面に見えるので更にポイント高いです

そしてよく響きます!
やはり彫りがあると空気の接地面積が増えるので響くのでしょうか(o^^o)
気分のものかもしれませんが かなりテンション上がります
とてもとても気に入りました。

本当にありがとうございました。
楽団の人達にすごい自慢しまくります^_^
墓場まで一緒に持っていきます。

 このメールの後、電話でも興奮をお届けいただいた。凄く喜んでいただけて非常に嬉しい。はあ〜、まずは良かった!

 常にオーナーさんの期待を超えられるようと思っているが、同時に今現在の自分を超えていきたいと思っているので、これからも悩んで苦しんではホッとして喜んでの繰り返しなのだろう。頑張ろう。