久しぶりにトロンボーンの彫刻依頼をいただきました〜。滅多にないというか、前回は20年前に銀座山野楽器さんからオーダーいただいた、ブラックラッカー仕上げのトロンボーンだった。詳しくは、以前のブログを参照ください。

今回も、オーナーにはわざわざお越しいただいて、色々とご要望を伺う事ができた。もちろん演奏をされる方だけど、なんと仕事は楽器業界との事で楽器に詳しく、特にトロンボーンには半端なく詳しい方だ。話をしているうちに、どんどん話題が広がって、楽器の構造、音の特徴、製造方法、楽器業界から音楽全般等のいろんな余談話に花が咲いて、あっという間に時間が経ってしまった。

さて、楽器の話に戻ると、今回はキングの真鍮製&金メッキ仕上げのトロンボーンで、ロゴマークの周りにレーザー彫刻が施されているモデルだった。

そして今回のご希望は?
伺ってみると、側面全体にゴリゴリには入れたくないそうで、ロゴマーク周りにコンパクトにオリジナル彫刻を施したいとの事だった。前回のトランペットに続く、ロゴ周りの彫刻だ。

こんな風なイメージという事で、参考にKINGとShiresの彫刻が入った3種類のモデルの写真を拝見した。なるほど、これはこれで上品に飾られている。

彫刻のデザインに関しては、たまに全体に隙間なくいっぱい入っていたら豪華彫刻と言われる事があるかもしれないが、私の感覚では楽器全体で見たバランスで、綺麗かそうでないかを感じるかどうかだ。

そういう点で、トロンボーンはトランペットと同じく、バランスのとりかたがいくつもありそうだ。全体に彫るのもよし、部分的に彫るのもよし。そんな中で、ロゴ周りというのはコアな部分を中心に典型的なバランス点がありそう。とか話しつつ、その場でラフな絵を描いてみた。

ロゴ周りに、菱形の変形のエリアを思い浮かべて、その中に彫刻をレイアウトするように考えてみる。そして、そのエリアを直接線で枠取りをするのではなく、いろんな細かい絵柄を配置してエリアを作っていく事にした。ついでに、私の場合、左右対象には彫らない。左右非対称の方が自然に見えるし、自由度が高い上に、仕上がりに力があるから好きだ。

さあ、実際に楽器に向かって下絵を描き始めた。好きな花が、①桜、②百合との事だったので、その2つをどう組み合わせるかという工夫もある。やっぱり桜の花は一輪では成り立たなくて、いっぱいの花が咲いて美しく見えるので、全体的には桜で、その中の一箇所に百合の花が一輪華麗に咲いているというレイアウトにした。

トランペットよりはわかるけど、やっぱりぐるっと回り込んでるのが写真に撮るのが難しいわあ。という事で、ついでに動画もアップ。

出来上がりは、私にとっても新鮮な感じでまずまずではあったが、問題はオーナーに気に入っていただけるかどうか。今回は特に厳しい目をお持ちの方だから、どうなることやら。

という事で、またご足労いただいて、前回と同じファミレスでケースごとお渡しした。一旦、コーヒーを取りに行ったりして、いよいよケースを開けるよという時はやっぱりドキドキする。さあどうなの?

「想像してたよりも断然素晴らしい出来映えで満足です」

よっしゃあ〜と思いつつ、ほっとしてコーヒーをもう一杯いただいた。この瞬間が一番の幸せだから。この後も、マニアックな楽器話が盛り上がって、あっという間に時間が経ってしまったのだった。