今回のオーナーさんの楽器は、YAMAHA製のサックス。その本体には花の彫刻が入っている。なので、本体ではなくて、ネックに同じく百合の花の彫刻を入れたいとの事だった。ちなみに、表面にはピンクゴールドメッキ処理が施されている。
オーナーさんのご要望のポイントは下記2点だった。
1.本体と同じく『百合の花』の彫刻をいれたい。
2.あまり主張し過ぎない、少なめで上品な彫刻をいれたい。
僕はゴテゴテに彫刻の入っているのが好みではなく、デザインにおいては引き算も大事にしているため、このご要望は自分にフィットしていて嬉しい。ちなみに、百合の花は好きな絵柄だ。彫刻を始めた頃から彫っているけど、気がつくと久しぶりだ。
メッキ層の厚さに関していうと、一番上にピンクゴールドメッキ層が数μmあって、その下には銀メッキ層がまた数μmある。その下には、もう一つ下地のメッキがあるかもしれない。今回の彫刻は、銀メッキ層までの深さでコントロールしていて、彫刻したところはピンクゴールドの中に銀色が見えて綺麗だ。
この出来上がりの反応だけれど、オーナーさんは静かに喜ばれた。彫刻が上品に入っているところがいいとの事だった。自分のこれまでの彫刻のデザインを振り返ってみると、空白を活かしたいと言いつつも割と多めに入っている。今回の方が自分の好みに近いみたいだ。ただ、そのバランスに関してはオーナーさんのご希望が大事なので、やっぱり会話や彫る前のコンセプトづくりが非常に重要だ。